ファネル分析の進め方|BtoBマーケティングでの活用方法を解説
ファネル分析は、BtoBマーケティングにおける課題の発見・改善に役立つ手法です。リード数や受注数を増やすために、マーケティング施策のどの工程に注力すべきかが明確になります。
自社のファネルを把握する方法やボトルネック指標の見つけ方、課題に応じた施策など、ファネル分析のポイントについて解説します。
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ファネル分析とは
ファネル分析とは、購買や情報発信といった消費者の行動プロセスを、ファネル(漏斗)状の図として表現し、分析する手法です。
ファネル分析を行うことで、行動プロセスの各段階の遷移状況を可視化し、ボトルネックを明確にできます。
ファネル分析の種類
ファネル分析にはいくつかの手法があり、用途が異なります。主な手法は次の通りです。
- パーチェスファネル
- インフルエンスファネル
- ダブルファネル
・パーチャスファネル
パーチェスファネルは、自社のターゲットが商品・サービスを認知してから比較検討、購入に至るまでのプロセスを分析する手法です。パーチェスファネルには、次のような段階が含まれます。
ファネルの段階 |
行動のフェーズ |
状態 |
---|---|---|
潜在層 |
認知 |
解決すべき課題がない、あっても認識していない |
準顕在層 |
興味・関心 |
課題を感じているが進んで情報収集はしない |
顕在層 |
比較・検討 |
課題への自覚があり解決策を模索中 |
明確層 |
行動(購入) |
具体的な発注先を絞り込んでいる |
どのようなアクションを取ったユーザーを「準顕在層」や「顕在層」などとして扱うかの定義は、取り組んでいるマーケティング施策の内容に応じた設定が必要です
・インフルエンスファネル
インフルエンスファネルは、商品・サービスの購入後の行動を表します。インフルエンスファネルに含まれる各段階は次の通りです。
ファネルの段階 |
状態 |
---|---|
継続 |
商品・サービスの購入後、継続利用やリピート購入をしている |
紹介 |
商品・サービスを周りの人に紹介している |
発信 |
商品・サービスについて広く情報発信をしている |
・ダブルファネル
ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせて分析する手法です。認知から購入、継続利用、情報発信までを一連の流れとして捉え、施策全体を改善する際に用いられます。
これらのファネルの内、BtoBマーケティングの受注獲得には「パーチェスファネル」を活用することが一般的です。そのため、この記事では主にパーチェスファネルを用いたファネル分析について解説します。
ファネル分析を行うメリット
ファネル分析を行うと、BtoBマーケティングの施策を行う上で複数のメリットが得られます。主なメリットは次の通りです。
- 受注までのボトルネックを把握・改善できる
- 部門間で目標を共有できる
- 施策の成果を定量的に評価できる
受注までのボトルネックを把握・改善できる
ファネル分析で認知から受注までのプロセスを可視化すると、ボトルネックを把握し、改善施策に取り組むことができます。
例えば、リード獲得から商談には進んでいるものの、その後の受注数が少ない場合には、受注率の低さが改善すべきポイントです。また、そもそもリード獲得数自体が少ない場合には、リード数を増やすための施策に注力する必要があります。
このように、受注数を増やすために何に取り組むべきかを確認できることが、ファネル分析のメリットです。
部門間で目標を共有できる
ファネル分析を行うと、マーケティングやインサイドセールス、フィールドセールスなどの部門間で認識を合わせられます。
リード獲得から商談化、受注までの遷移をスムーズにするためには、各部門の連携が重要です。ファネル分析で購買行動の全体像を整理することで、課題や目標を共有しながら施策に取り組めます。
施策の成果を定量的に評価できる
リード獲得やリードナーチャリング、インサイドセールスといった施策の成果を定量的に評価できることも、ファネル分析のメリットです。ファネルの各段階の遷移率を計測することで、各施策の目標達成度合いを把握できます。
ファネル分析の進め方
ここからは、ファネル分析の具体的な進め方を見ていきましょう。ファネル分析を行う際の手順は次の通りです。
- 情報共有できる体制を整える
- 自社のファネルを把握する
- ボトルネック指標を見つける
ファネル分析の手順1. 情報共有できる体制を整える
ファネル分析にはマーケティングや営業、カスタマーサクセスなど様々な活動に関するデータが必要です。そのため、部門間で情報共有できる体制が求められます。
Webサイトの訪問者数については、アクセス解析ツールで把握することが可能です。リード数や案件数、受注数についてはCRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援ツール)などで管理すると、部門間でスムーズに共有できます。
ファネル分析の手順2. 自社のファネルを把握する
次に、自社で取り組んでいるマーケティング施策に応じて、ファネルを作成しましょう。
例えば、 オンラインのBtoBマーケティング施策に取り組んでいる場合、次のような指標を用いてファネル分析をすることが可能です。
- Webサイトへの来訪者数(認知)
- リード数(興味・関心)
- 商談数・案件数(比較・検討)
- 受注数(行動)
Webサイトへの来訪者数には、検索エンジンからの流入や広告からの流入が含まれます。リードの内容は資料請求やホワイトペーパーのダウンロード、セミナー申し込みなどです。
ファネル分析の手順3. ファネルの中のボトルネック指標を見つける
作成したファネルの各段階について、次の段階への遷移状況を把握しリード獲得から受注化までのどこがボトルネックになっているかを確認しましょう。BtoBマーケティングのファネル分析でチェックするべき主な指標は次の通りです。
来訪からリードの「獲得率」
Webサイトへの訪問者数に対するリード獲得数の割合である「獲得率」は次のように計算します。
リード数 ÷ 来訪者数 × 100 = 獲得率(%) |
例えば、Webサイトへの来訪者が1,000件、リード獲得数が20件の場合、獲得率は2%です。獲得率は、資料請求やホワイトペーパー、メルマガ登録など、リード化するための施策の種類によって異なります。BtoBサイトからの獲得率の目安は1%~3%程度です。
リードから商談への「商談化率」
リード化から商談への遷移率である「商談化率」は、次のように計算できます。
商談数 ÷ リード数 × 100 = 商談化率(%) |
例えば、100件のリードから20件の商談が獲得できた場合、商談化率は20%です。商談化率は業種や商材によって異なるものの、20%~30%程度が目安となります。
商談から案件への「案件化率」
ここでの案件化とは、商談後の顧客のうち具体的に検討に入った商談のことを指します。商談化から案件への遷移率である「案件化率」は、次のように計算できます。
案件数 ÷ 商談数 × 100(%) = 案件化率(%) |
例えば、100件の商談から40件の案件が獲得できた場合、案件化率は40%です。案件化率は業種や商材によって異なるものの、40%~60%程度が目安となります。
案件から受注への「受注率」
案件化から受注へつながる割合を示す「受注率」の計算方法は次の通りです。
受注数 ÷ 案件数 × 100 = 受注率(%) |
例えば、10件の案件から3件の受注が獲得できた場合、受注率は30%です。受注率は、商材の単価や営業担当者のスキルなどによって変わります。BtoBにおける受注率の目安は、20%~40%程度です。
受注から継続への「更新率」
SaaSなどの契約更新がある商材を販売している場合、「更新率」も重要な指標です。更新率は次のように計算します。
継続数 ÷ 受注数 × 100 = 更新率(%) |
例えば、契約更新となる受注が100件あり、そのうち98件が継続した場合、更新率は98%です。更新率の目安は95%~99%程度で、顧客の企業規模が大きいほど100%に近い更新率をキープすることが求められます。
ファネル活用の方法 | 課題を明確化して施策に落とし込む
ファネル分析で計算した指標の中で、目安の数値を下回っているものがあれば、その箇所が改善すべきボトルネックです。見つかったボトルネックに応じて、課題を解決するための施策に取り組みましょう。
ファネル分析を活用する主な方法は次の通りです。
- 来訪者数を増やす施策
- 商談化率を高める施策
- 受注率を高める施策
- 更新率を高める施策
来訪者数を増やす施策
ファネル分析の結果、BtoBサイトへの来訪者数がボトルネックだった場合は、次のような施策が有効です。
・広告
Web広告を出稿することで、BtoBサイトへの訪問者数を増やし、リード獲得につなげられます。検索エンジンの結果画面に表示されるリスティング広告や、ブログなどの掲載面に配信できるディスプレイ広告、SNS広告などの種類があります。
広告運用についての詳しい内容は、下記の記事を参考にしてください。
・コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、オウンドメディアやサービス資料、ホワイトペーパーなどを用いてリードを獲得する手法です。自社のWebサイトを検索エンジンの上位に表示させることで、訪問者の増加が期待できます。
コンテンツマーケティングの詳しい内容については、下記の記事を参考にしてください。
・セミナー・ウェビナー
セミナーを開催することも、リード獲得につながります。自社のノウハウや成功事例、見込み顧客の課題解決に役立つ情報などを発信するセミナーを企画し、自社のターゲットユーザーを集めましょう。
セミナー施策についての詳しい内容は、下記の記事を参考にしてください。
獲得率を高める施策
ファネル分析により、Webサイト訪問からのリード獲得率が低い場合には、次のような施策が有効です。
・LPO(LPの最適化)
Webサイトの入口であるLP(ランディングページ)を最適化することで、獲得率を高められます。ターゲットユーザーの興味・関心に合った情報を伝えることや、ページのデザインをわかりやすくすることなどがLPOの主な施策です。
・EFO(フォームの最適化)
EFOとは、資料請求やホワイトペーパーダウンロードなどを申し込むためのフォームを最適化することを指します。入力項目数の見直しや、入力エラーをその場で表示する機能の実装などにより、獲得率の向上が期待できます。
・CTAの最適化
CTA(コールトゥアクション)とは、Webサイト訪問者に行動を促すことです。BtoBのリード獲得では、資料請求や問い合わせなどが主なCTAとして挙げられます。ページごとに最適なCTAを用意することが、獲得率を高めるためのポイントです。
獲得率を改善するための詳しい方法は、下記の記事を参考にしてください。
商談化率を高める施策
ファネル分析の結果、 商談化率がボトルネックだった 場合の解決策として、次のような取り組みが挙げられます。
・EFO(フォームの最適化)
EFOは獲得率だけでなく、商談化率の改善にも有効です。フォームの入力項目として、業種や事業規模、抱えている課題などを含めることで、営業からのアプローチがしやすくなります。
・すぐアプローチをする
リードを商談につなげるためには、アプローチのタイミングも重要です。例えば、資料請求を行ったリードに対してすぐにメールや電話によるアプローチを行うと、興味度が高い状態で接触し商談化につなげやすくなります。
・ホットリードを定義する
ホットリードとは、検討度合いが高く商談につながりやすいリードのことです。抱えている課題の内容や緊急度、行動履歴などの情報をもとにホットリードを抽出してアプローチすると、商談化率を高められます。
・日程調整をスムーズに行う
日程調整に時間がかかってしまうと、商談化のチャンスを逃してしまうリスクがあります。ツールを活用するなど、スムーズに日程調整を行うための仕組み作りが大切です。
商談化率を高める詳しい方法については、下記の記事を参考にしてください。
受注率を高める施策
ファネル分析の結果、 受注率がボトルネックだった場合に取り組むべき施策は次の通りです。
・見込み顧客情報をデータ化・管理する
受注率が低い場合、見込み顧客が抱える課題に対して適切なアプローチができていない、そもそも購入期待度が低い商談を獲得してしまっているなどの原因が考えられます。CRMなどのツールを用いて、見込み顧客の情報をデータ化・管理すると営業の精度を高めることが可能です。
・セールスイネーブルメントに取り組む
セールスイネーブルメントとは、営業部門の成果を上げるための取り組みです。担当者間でのナレッジ共有や人材育成により、受注率の向上が期待できます。セールスイネーブルメントを実施する際は、MA(マーケティングオートメーション)やSFAなどのツールを利用し、情報共有を効率化することが重要です。
受注率を高めるためのMA活用・SFA活用についての詳しい内容は、下記の記事を参考にしてください。
更新率を高める施策
ファネル分析を行い、 サービス受注後の更新率がボトルネックだった場合の対策として、次のようなものが挙げられます。
・解約の理由を明らかにする
顧客が解約に至った理由を知ることは、更新率を高めるための第一歩です。解約時のフォームに解約理由についてのアンケート項目を含めるなど、サービス改善に必要な情報を集める仕組みを作りましょう。
・顧客が成功するための仕組みをつくる(カスタマーサクセス)
カスタマーサクセスとは、商品・サービスを導入した顧客が成果を出せるように支援する取り組みのことです。商品・サービスの導入サポートや、顧客ごとの課題に合わせた使い方の提案などを行い成果につなげることで、更新率を高められます。
・解約する可能性が高い顧客を事前に把握する
解約する可能性が高い顧客を把握できれば、解約前に何らかのアプローチが可能です。これまでに解約したユーザーのサービス利用状況などを分析し、解約に至りやすいパターンを把握しましょう。
・機能の使い方をしっかり伝える
商品やサービスの使い方がわからなければ、継続を契約してもらうことはできません。マニュアルや導入後のサポートなどを充実させ、機能の使い方を十分に伝えることが、解約を防ぐために重要です。
以上のような流れで、ファネル分析によるボトルネックの把握と改善施策に取り組んでいきましょう。
ファネル分析のポイントをおさらい
- ファネル分析でBtoBマーケティングの課題を発見できる
- 獲得率、商談化率、案件化率、受注率、更新率が分析すべき主な指標
- ファネル分析を行うためには部門間で情報共有できる仕組みが必要
- ボトルネックによって取り組むべき改善施策が異なる
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